物語の中心人物は、国王の息子であるエドワード王子と、オンボロ横丁で貧しい暮らしを送るトム・キャンティのふたり。育った境遇はまったく違うのに、容姿がそっくりな彼らが遊び心で入れ替わり、いざ戻ろうとしたとき――「僕は本当に王子じゃないんです」とトムが、「王子は私だ。私はエドワードだ」とエドワードが役人や町の人々に伝えても、だれもそうとは信じてくれません。見た目だけで判断してしまう彼らに、ふたりは勇気をもって自分が"自分であること"を主張し続けます。
ふたりの姿から「姿かたちではなく真実を見つめること」「真実を言う勇気」「本当の自分らしさ」など、生きていくなかで本当に大切なことにきっと気づくことができるはず。
見どころ②
軽快でダイナミックなダンスと心に響く音楽
宮殿やオンボロ横丁をはじめ、それぞれの場所で暮らす人々が個性豊かな歌とダンスで物語を紡ぐ本作。
思わず笑みがこぼれてしまうようなユーモアあふれるダンスから、見とれてしまうような優雅なダンスまで、様々なダンスが、キャラクターの個性や、場所、ドラマを描きます。
作曲家・いずみたく氏による音楽も見どころのひとつ! 特にご注目いただきたいのは、劇中で繰り返し歌われる「真実の歌」。"どんなときでも真実をはっきり言おう"という、メッセージが込められており、耳なじみが良いメロディーが印象的な、ついつい口ずさんでしまいたくなるナンバーです。中でも2幕終盤、舞台と客席が一体となる感動のクライマックスは圧巻! 魅力あふれるナンバーの数々をぜひご堪能ください。
16世紀ロンドンを舞台にした『王子と少年』には、実在の人物や地名が登場します。
例えば物語の主人公のひとり、エドワード王子はエドワード6世というイギリスの王子様。父・ヘンリー八世の死により、わずか9歳で即位をしました。また、戴冠式で登場する、ウェストミンスター寺院という建物。世界文化遺産にも登録されていて、ほぼすべてのイギリス王室の戴冠式がここで行われています。
このほかにも史実をモチーフとしたものがいくつか登場する本作では物語とともに歴史にも触れることができます。気になる方はぜひ調べてみてください!
エドワード王子=守山ちひろ、トム・キャンティ=前田更紗/生形理菜、マイルス・ヘンドン=田中彰孝
(撮影:下坂敦俊/上原タカシ) 写真はこれまでの公演より