見どころ①
世界が愛するあの名著を、
色鮮やかなミュージカルに
「赤毛のアン」といえば、誰もが一度はそのタイトルを耳にしたことがあるはず。
舞台はカナダのプリンス・エドワード島。その中のアヴォンリー村に立つ緑の切妻屋根の家、通称グリーン・ゲイブルズに住む年老いた兄妹、マシュー・カスバートとマリラ・カスバートは農作業の手伝いにと、孤児院から男の子を引き取ることにしました。マシューが駅まで迎えに行くとそこで待っていたのは、驚くほど夢見がちで、思いついた空想を矢継ぎ早に語る赤毛の少女だった――。
冒頭からつい引き込まれるこの魅力的な物語は、今年で生誕150周年を迎えるカナダの作家、ルーシー・M・モンゴメリーによって生み出されました。1908年に出版されて以来、世界各国で読み継がれており、日本でもたくさんのファンから支持されている作品です。
国境や世代を超えて愛され続ける名著がミュージカル化されたのは1965年。初演の公演地は、物語の舞台にもなっているプリンス・エドワード島でした。その後1980年に劇団四季によって日本語版『赤毛のアン』が製作されると、本家本元のカナダ人スタッフが「世界で最高のアン!」と絶賛。原作ファンの方を始め、その温かなメッセージや愛すべきキャラクターたちが舞台で躍動する姿は多くのお客様の心を捉え、以後何度も再演を重ねるレパートリーの一つとなりました。
本作の魅力は、そのキャラクターやストーリーだけではありません。
ミュージカルならではの思わず口ずさみたくなるような楽曲の数々もまた舞台を豊かに彩ります。笑いあり、涙あり、またある時は迫力いっぱいのダンスあり!その中でもひときわ輝きを放つのが1幕の最後に登場する「アイスクリーム」のナンバー。アンが日曜学校のピクニックで、村のみんなと力を合わせてアイスクリームを作るときに歌われるこの曲は、生まれて初めてのアイスクリームに心を弾ませるアンの心境にぴったりな、軽やかでリズミカルなナンバーです。途中、子どもたちがスプーンに卵を乗せてレースを繰り広げる場面は、見ているだけでハラハラドキドキ!ダイナミックで、ダンスシーンとしても見ごたえたっぷりです。
この他にも、アンが馬車に揺られて歌う「私は私でよかった」や、学友ダイアナ・バリーと永遠の友情を誓う「腹心の友」など、一度聴くだけで耳に残る曲がたくさん。楽しく美しい名曲の数々をご堪能ください。
アン・シャーリーといえば、そのキャラクターは"想像力豊か"という言葉で表現されることが多いでしょう。アンの手にかかれば、何てことない庭のりんごの木が"雪の女王"になり、ありふれた赤土の道も、"昔の戦で倒れた戦士たちの血潮に染まった道"という特別な存在に変わります。
アンの豊かな想像力は、単なる無邪気な子どもらしさの表れというだけではありません。たとえ避けることのできない悲劇的な事実に直面しても、ただ絶望するだけでなく、持ち前の想像力や行動力で今の時間を少しでも幸せなものにしようとするアンのひたむきさは、物語の随所に現れて心を揺さぶります。一瞬一瞬を懸命に生き、どのような境遇の中でも幸せを見つけに行くアンの姿は、困難の多い今の時代を生きる私たちにも、大切なものを届けてくれることでしょう。
ぜひこの冬は、ときめきや想像力と一緒に大きく成長していくアンに会いに、劇場へお越しください。アンとアヴォンリー村の住人たちが、皆様をお待ちしています!
アン・シャーリー=若奈まりえ/林 香純、マシュー・カスバート=菊池 正、マリラ・カスバート=中野今日子、
ダイアナ・バリー=小川美緒、ブルーエット夫人=金原美喜、ジョシー・パイ=生形理菜
(撮影:山之上雅信/荒井 健) 写真はこれまでの公演より