4月6日(日)に日本初演を迎える海外新作ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(JR東日本四季劇場[秋])。
2月初旬に始まった稽古は、台本の読み合わせを経て、2月半ばには登場人物の動きの整理をしたり、振り付けたりする「ステージング稽古」へと進みました。
ある日の稽古で行われていたのは、主人公・マーティが、友人で科学者のドクが発明したタイムマシンで1985年から1955年にタイムトラベルしてしまい、そこで若き日の父・ジョージと出会うシーン。
ステージング稽古に入る前、演出のジョン・ランドさんは、「まずは台本の読み合わせをしましょう」と促し、台本と向き合う作業から始まります。ジョンさんはポイントとなる台詞一つひとつを取り上げて、登場人物たちの会話の意図や、お互いの関係性、それぞれが抱えている想いや背景を説き、掘り下げていきます。
ジョンさんは、1985年と55年それぞれの場面で2度、マーティが同じ歌詞で歌うシーンについて解説します。
1度目は、1985年現代のマーティはバンドのオーディションに落選し、校長先生から「お前には未来はない」とそしられ、自らを「負け犬だ」とこぼす場面。そして2度目は、55年にタイムトラベルし、ビフにいじめられている父ジョージの姿を目にした時。マーティはここでも「負け犬だ」と悲観します。
ジョンさんはこの場面について、「同じフレーズだけど、感情は異なります」「ティーンエイジャーが抱えている苦悩や怒りをもっと出して」と伝え、心情の変化を指示。

また別の場面。過去にタイムトラベルしたマーティに訪れた最大のピンチ――高校時代の母親ロレインに惚れられてしまい、両親が恋に落ちなければ自分が生まれないという局面。その最悪な事態を打開すべく、マーティは内気なジョージに声をかけ、ロレインをパーティーに誘うようにと助言します。
ここでジョンさんは、「マーティはジョージを知っている。でもジョージはマーティをよく知らない」と前提を話し、「最初はマーティを警戒していたジョージが、会話のなかで次第に心を開いていく。ふたりの絆が生まれた瞬間が見たい」と芝居の方向性を導きます。

そうやって理解を深めた上で、いよいよステージング稽古へ。
基本的な動きを確認すると同時に、誰に向かってどんな想いで台詞を言い、どのような動機で移動をするのか――あらためて内面も確認していきます。
その頃、別の稽古場では振付のクリス・ベイリーさんを中心にダンス稽古が行われていました。
稽古していたのは、1955年にタイムスリップしてしまったマーティを、ヒルバレーの住民が歓迎する華やかなナンバー。50年代の景気の良さや、活気溢れるヒルバレーを象徴するシーンとして作り上げていきます。

未来を自らの力で切り開こうと奮闘する『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の登場人物たちのように、俳優たちもまた、来たる4月6日(日)開幕に向けて切磋琢磨する日々が続きます。
とびきりの超大作エンターテイメントを、ぜひ劇場でご体感ください!
(撮影:阿部章仁、劇団四季)