7月17日(水)の『キャッツ』静岡公演開幕に向けて、四季芸術センター(横浜市あざみ野)では稽古が進んでいます。台本の読み合わせ、ステージングを経て、6月下旬にはいくつかのシーンを区切って繰り返す「小返し稽古」の段階へ。とある日、1幕を中心に稽古が行われました。
稽古を前に、レジデント・ディレクターを務める坂田加奈子が声をかけます。
「読み合わせ稽古で培った新しい発想や情報を、自分の血肉にし、またそれを捨てて"ここで生きる"ということをしたいです。『キャッツ』は特に、人ではないものを生きなければならない作品。広げた発想をさらに超えて、己の行動として体現していきましょう」
その言葉の通り、冒頭の「ジェリクルソング」は、猫たちの強靭(きょうじん)かつしなやかな身体能力を見せつけるかのような、激しいダンスが繰り広げられます。誇り高く生きる野生の猫"ジェリクルキャッツ"とは何かを、バトンのようにソロを歌いつなぎながら語る"掴み"のナンバー。稽古場に引かれた白線――客席通路を示す印にまで俳優が飛び出し、縦横無尽に駆け巡ります。激しい振付の中にあっても、歌声の一つひとつ、歌詞から喚起されるイメージまでもがしっかり客席へ届くよう、音楽部スタッフが耳を澄ませ、坂田が目を光らせるなか、何度もシーンが繰り返されます。
「『壁をのぼる 綱を渡る』は、繰り返しであってもバリエーションが欲しいです」
「『プラクティカルキャッツ~』以降は個性を出したい。音楽的なパワーに流されず、切り替えて」
また、それまでの爆発的な"動"が"静"に一転し、猫の本当の名前に隠された秘密について語られる「ネーミング オブ キャッツ~猫の名」。その語り出しに、リーダー猫・マンカストラップが発する「ジェリクルキャッツを知っているか?」という問いかけを全員が繰り返す場面では、「単なる力技にはしないで、それぞれのキャラクターに沿った聞き方ができるはず」とのアドバイスが。
実際に試してみると、「とても良い。それぞれの中で意識が変わったことがわかり、ゾクッときました。毎回これをなぞる必要は無いけれど、この問いを自分がどう問いたいのか、瞬間ごとに、『お客様がどんな顔で観ているか』にも影響をもらって、やってみてください」と坂田。その後も一つひとつのナンバーが丁寧に繰り返され、俳優たちはそれぞれの課題と向き合いながら稽古に没頭しました。
2018年東京公演に演出がブラッシュアップされ、「マンゴジェリーとランペルティーザ~小泥棒」など一部ナンバーの曲調変更や、「ランパスキャット~けんか猫」が1987年以来登場するなど進化を続ける『キャッツ』。静岡では初めてお披露目されるこれらのシーンも、どうぞお楽しみに。
レポート後編では、2幕を中心とした稽古の様子をお届けします。
『キャッツ』静岡公演は、7月17日(水)から9月23日(月・休)までの期間限定。約10年ぶりに静岡で上演される本作に、どうぞご期待ください。