12月24日(日)、東京・自由劇場で約11年ぶりに上演される『ひばり』。開幕に向けて、四季芸術センター(横浜市あざみ野)では稽古が始まりました。
1953年、10人の学生たちによって立ち上げられた劇団四季は、ジャン・ジロドゥ、ジャン・アヌイをはじめとするフランス現代劇の上演から出発。中でもアヌイの「最高傑作」とも評されるストレートプレイ『ひばり』は、劇団創立初期より、節目の年に上演されてきました。
創立70周年の今年、11月上旬。ひさびさの上演に向け、出演候補俳優とスタッフが初めて稽古場で顔を合わせました。前回公演に携わった経験者や、今回初めて作品に挑む者。代表取締役社長・吉田智誉樹からは、集ったメンバーに向けて、想いが語られました。
「『ひばり』には劇団四季の演劇の理想の形があると思います。先輩方が目指し歩んだ道を、今度は自分たちだけで歩み、チャレンジしていくことになります。アヌイを徹底的に読み込んで作られた浅利先生の舞台を再現するためには、その本質に踏み込んでいかないと、決して届かないと思います。大変難易度の高いことですが、劇団四季が劇団四季であり続けるために、避けては通れない道です。総力を上げて臨み、知恵を出し合い、浅利先生の弟子として一致団結して挑みましょう」
浅利慶太のオリジナル演出を受け継ぎ今回再演版の演出を担当するのは、レジデント・ディレクターの荒木美保。ステージング担当の礒津ひろみや、劇団OGの斉藤昭子もアドバイザーとして見つめる中、台本を頭から通す「読み合わせ」が始まります。
主人公は、ジャンヌ・ダルク。13歳で神の声を聴いて以来、男の服を身にまとい、自ら英仏戦争の最前線でフランス軍を導いた少女です。敵のイギリス軍にとらえられ、カトリック教会の意に反する行いをした疑いで宗教裁判にかけられることに。その裁きの場にて、ジャンヌの半生の様々な断片を振り返る形で、物語は進みます。
今回客演として主役を演じる野村玲子は、浅利演出のもとでジャンヌを演じてきました。ジャンヌがいかにして戦いに赴くことになったのか。政治と宗教に翻弄されながら、どうして自ら火刑を受け入れたのか......。欲にまみれた世間に立ち向かい、持ち前の知恵と理性で大人たちを魅了し、自らの意志を貫き運命を選んだ、その先にあるものは――?
『ひばり』にしかない幕切れを迎え、終幕の音楽に思い思いの表情で耳を傾けながらしばし沈黙し......それからほっと稽古場の空気が緩みました。
大きな物語を初めて紡ぎ終えた俳優たちに、レジデント・ディレクターの荒木からは、次の言葉がありました。
「前回公演の稽古で浅利先生は、台本を読み込み丁寧に台詞に向き合うこととともに、『決して守りに入らないように、思いっきり体当たりでやるように』とおっしゃっていました。このメンバーで『ひばり』を大切に、そして体当たりで立ち上げていきましょう」
最初の一歩を踏み出した、2023年の『ひばり』。創立70周年を記念するにふさわしい演目としてお届けするため、台本と向き合い、稽古を重ねる日々が続きます。