来る5月21日(土)、KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉で幕をあけるミュージカル『ノートルダムの鐘』横浜公演。 4月半ば、稽古はシーンごとに区切り、芝居や歌唱、振付を深めていく「小返し稽古」の段階へ。出演経験者と、初めてこの作品に参加する新メンバーで編成された横浜公演カンパニー。経験者はあらためて作品と新鮮に向き合い、新メンバーはすべてを吸収しようと、全員が一から物語を築き上げるため、集中して取り組んでいました。
その中心で、俳優たちに言葉を掛け、意見を交わしながら導くのは、レジデント・ディレクターの山下純輝と坂田加奈子。
2016年の日本初演時、本作の演出を手掛けたスコット・シュワルツ氏による稽古で教え受けた彼の言葉を、この新たなカンパニーに伝承する役割を担っています。
「歌詞をしっかり聞かせて。どんなに一生懸命パフォーマンスをしても、人は言葉を受けとり認識する。ナンバーのアタマの歌詞から大切に」
稽古のなかで、山下は言葉の重要さを繰り返し説きます。
また、坂田は、振付や所作についてリアリティを追求。
「おじぎは日本と違い、相手を見上げ、敬う。それもこの時代を表す象徴の一つ」「この場面ではアンサンブルの皆さんは、ガーゴイル(怪物などの形をした彫刻)です。指の先まで石であることを意識して」
15世紀末のパリ・ノートルダム大聖堂を舞台にした本作。
シンプルな舞台セットによって"人"を際立たせ、コーラスを奏でるクワイヤ(聖歌隊)によって重厚な音楽を響かせます。そして、演者自らが語り手となり物語を進めるという、中世ヨーロッパの典礼劇にもとづいた演出――これら世界観のなかで、俳優たちがリアリティをともなって舞台に立つとき、15世紀末のノートルダム大聖堂が劇場に息づくのです。
「皆、どんどん良くなっています。これを開幕までに積み上げていってください。ただし、言葉への緊張感、正確性は保ち続けること。その上で心の振り幅をもっともっと広げていきましょう」
山下の言葉で、この日の稽古は締めくくられました。
生まれながらに障害をもつ主人公・カジモド、彼を匿い育てるノートルダム大聖堂大助祭・フロロー、戦争による心の傷を抱えた大聖堂警備隊長・フィーバス。そして彼ら3人が同時に愛してしまうジプシーの踊り子・エスメラルダ。
抗いがたい宿命を背負った彼らに芽生えた心の変化、ひずみは、人間の「光」と「闇」を浮き立たせ、今の時代を生きる人々の胸を揺さぶります。
『ノートルダムの鐘』横浜公演は8月7日(日)までの期間限定公演。チケットのご予約は、ぜひお早めに。