むかしむかし、ある国に、とてもわがままで乱暴な王様が住んでいました。王様の悪口を言う人は、みんな処罰されてしまいます。それが本当のことだとしても、決して許してもらえません。だからお城の人たちも、王様のごきげんをとってばかり。
しかし、王様には大きな秘密がありました。なんと、王様の耳は毛むくじゃらの「ロバ」の耳だったのです。
王様の髪を切りにお城に来た床屋たちは、つい「王様の耳はロバの耳」と口にしてしまい、みんな牢屋に入れられてしまいます。とうとう町に残った床屋はたったひとりに。その最後の床屋も、お城へ呼ばれてしまいます。床屋は王様の耳を見てビックリ!
けれど、ほかの人には言わないという条件つきで、町へと帰してもらうことができました。
町に帰った床屋は無口になり、すっかり人が変わってしまったよう。王様の秘密をしゃべると、牢屋に入っている父親を殺すとおどされているのです。そんな床屋を、町の人たちは白い目で見る始末。
思い悩んだ床屋は、いつのまにか森へとやってきていました。そして、人に言えない苦しみを木々に向かって打ち明けます。すると、どこからともなく森の精たちの声が聞こえてきたのです。
「お言いなさいな、本当のことを。私たちはいつでも、あなたの味方。森はいつでも生きている。本当のことも生きている」
森の精たちにはげまされた床屋は、本当のことを言うために、もう一度勇気を出そうと決意をします。
さて、"本当のこと"は王様の耳に届くのでしょうか?
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