ロブ・アシュフォード氏 インタビュー

NOMURA野村證券ミュージカルシアター JR東日本四季劇場[春]で開幕するディズニー最新ミュージカル『アナと雪の女王』。

振付は、これまでにトニー賞、オリヴィエ賞、エミー賞などの受賞歴があり、シェイクスピア作品にも造詣の深いロブ・アシュフォードさんが手掛けています。ロブさんがこの舞台にどんな魔法をかけたのか、お話をうかがいました。

『アナと雪の女王』の舞台化ということで、シンプルに「雪の結晶が踊ったりするのかな?」と想像してしまいましたが、そんなことはなく、とても洗練された舞台でした。

ダンスもステージングも、すべて物語の一部にしたい。エンターテインメントというだけでなく、物語性がダンスの中に表現できていなくてはならない。そこには、とてもこだわりました。

この舞台はプロデューサーであるアン・クォート氏が語ったように、シェイクスピアから大きなインスピレーションを得ています。ダンスで物語を表現することはもちろん、コーラスが語り部となり随所に登場する。これはギリシャ時代から続く、伝統的な演劇手法です。

一方で、コミカルであったり、アクロバティックなダンスも織り込まれていますね。

この作品にはふたつの世界が内包されています。ひとつは、美しい女性がいて、衛兵がいて、登場人物の背筋はぴんと伸び、きびきびと動く“おとぎ話の世界”。もうひとつは、重心が低く、流れるように動く“魔法の伝説の世界”。そのふたつの世界を振付によっても表現しています。

そして、“おとぎ話の世界”をダンスによって表現することは、シリアスな表現とは異なる難しさがあります。だからこそ、やる価値がある。
たとえば、アナとハンスが気持ちを確かめ合う「Love is an Open Door」。互いに惹かれ、繋がろうという意識があるものの、異なる人生を歩んできた者同士、まして王女と王子という立場にあって、なかなかすんなりとはマッチはせず、ぎくしゃくしてしまう。

エルサも悩みを抱えていますが、アナも彼女にしかない葛藤を抱えている。楽しいナンバーではありますが、そうした内面や物語は必ず振付の中に落とし込まなくてはなりません。

この物語の舞台は北欧がひとつのモデルとされていますが、振付を考える上でも、そのイメージはありましたか?

もちろん。北欧は王や王妃が街中を自転車で走り、会話を楽しむほど、王家と国民の距離感が近いです。冒頭の春の祭典など、そのイメージは常にアイディアの中にありました。

最後に、この舞台を通じて、もっとも伝えたいことはなんでしょう?

アナとエルサはプリンセスであり、クイーンですが、彼女たちに限らず、どんな人間にもその人が歩む旅路があります。そして、どこかに必ず幸せがある。

現代人はすぐに結果を求め、手に入らないことに失望しますが、実は本当の幸せはひとつひとつの歩みの中に、旅の道のりで出会う人々や出来事の中に散りばめられているものです。

本当の幸せを手に入れるために、プリンセスであるかどうかは関係のないこと。エルサもアナも皆さんも、同じ人生の旅路を歩む旅人同士として、この舞台を味わっていただきたいです。

撮影:荒井 健