はじめに Introduction

「ホール・ニュー・ワールド (新しい世界へ)」
"自由"を求め、大いなる"希望"を胸に、
"未来"へと向かうアラジンの物語

2014年3月の開幕以来、連日のスタンディングオベーションが続き、週間興行収入も常にトップクラスに位置している『アラジン』ブロードウェイ公演は、現代の観客からの圧倒的な支持を得る、その名の通りの大ヒットミュージカルです。6月のトニー賞では、作品賞含む5部門にノミネート。うち、最優秀助演男優賞を獲得しています。

なぜミュージカル『アラジン』が、これほどまで観客に愛されるのか。それは何よりも第一に、この作品が、徹底的なエンターテインメント性に貫かれているからです。『アラジン』を構成する全ての要素が、観客を心の底から楽しませようというベクトルをもっているのです。

入念に練り上げられたキャラクターの魅力もその一つでしょう。舞台版では、原作となるアニメーション映画の内容を深化させるべく、キャラクター造型や心情描写、そして各々の関係性が丁寧に描き込まれています。これにより、物語はさらに奥行きある人間ドラマとなっています。

とりわけ、街の青年アラジン、王女ジャスミン、そして"魔法のランプ"の精ジーニー3人の心情や行動は、多くの観客に深い共感を与えるのではないでしょうか。なぜならば、彼らはいずれも"今の自分の立場"について疑問や失望を感じており、ここではない「新しい世界(ホール・ニュー・ワールド)」へ向かうための"自由"を求めているからです。

アラジンは、亡くなった母親が誇りに思うような立派な人間になりたいと願っているが、日々の貧しさから、盗みを止めることができずにいる。ジャスミンは、聡明で自立心が強いが、王国のルールに縛られている。ジーニーは、ランプをこすった主人に仕えるという宿命を背負い、そもそも"自由"が与えられていない。こうした彼らの境遇には、現代人の誰しもが向き合わざるを得ない自分自身という存在への問いが暗示されているように思えてなりません。

価値観が多様化し、様々な問題が複雑に絡み合う現代において、彼らのように自ら選択し決断し続ける人間の存在は、一種の眩さを感じさせます。ロマンスと冒険のファンタジーでありながら、アラジンもジャスミンもジーニーも、今を生きる全ての人々にエールを送り続ける極めて現代的なキャラクターであり、他方、それらを包括するドラマの奥底には、現代的なテーマと、新世界へと歩みを進めようとする未来的なメッセージが湛えられているのです。

関連コンテンツ

観劇はじめてガイド

はじめての観劇ガイド

ストーリー Story

ストーリー

登場人物 character

登場人物