「思い出を売ります。
美しい音楽によみがえる幸福な夢。
君よ、思い出に生き給え。
思い出は狩の角笛――」
終戦間もない東京の薄暗い裏街。
一人の男が古ぼけたサクソフォンを吹きながら「思い出」を売っていました。
彼の奏でる音楽に誘われて様々な人がやってきます。
まだ思い出を持ったことのない無邪気で幼い花売娘、したたかな広告屋、そして重く暗い影をひきずる街の女。
女は男が吹くメロディーに恋人との幸福な思い出をよみがえらせます。
故郷に愛しい少女を残してきたG.I.の青年は、「金髪のジェニー」のメロディーに恋人の面影を追うのでした。
陽気な乞食は明るく希望に満ちた音楽をリクエストし、男は「自由を我等に」を奏でます。
乞食は男に、自分ほど幸福な人間はいないと言うのでした。