太平洋戦争前夜の京都——。
大学で法律を学ぶ保科勲は、恋人のリナとの別れを惜しんでいます。
インドネシアからの留学生リナが、独立運動の激化する祖国を憂い兄とともに急遽帰国することになったのです。
二人はインドネシアに伝わるソロ河の歌「ブンガワン・ソロ」をともに歌い、いつの日か再会することを約束します。
当時、中国との戦いが泥沼化していた日本は、ついにアメリカ・イギリス・オランダとの全面戦争へと突入します。学生である勲もまた、姉の夫・原田とともに南方戦線へと向かうことになりました。
赴いた戦地インドネシアで負傷した勲は、リナと再会、手厚い看護を受け、この国に伝わるジョヨボヨ伝説を耳にします。
伝説によれば白い悪魔に支配されるインドネシアは、やがて北から来る黄色い勇士たちによって解放されるが、勇士たちもまたトウモロコシが実る季節に去りゆくのだ、と。
開戦から3ヶ月、日本軍は破竹の勢いで勝ち進みオランダ軍を撃退。
島村中将の穏健な軍政の下、植民地支配から解放された現地の人々が喜びに沸きかえります。
つかの間の平穏な夜、勲とリナは夜空に輝く南十字星に永遠の愛を誓い合うのでした。
決して変わらぬ 二人の心
南十字星のもと誓おう
いつかは必ず
願いは叶うと 祈り込めて
しかし、戦況はにわかに悪化します。
島村中将の思いとは裏腹に、部下の原田は大本営の方針をたてに現地住民へ食料供出や労役を強要します。一方、捕虜収容所では逼迫する食糧不足や虐待にオランダ人捕虜たちの怒りは限界まで達していました。勲は、理解を求めようと懸命に働きますが、誤解の積み重ねから捕虜たちの怨嗟の対象になり、顔と名前を覚えられてしまいます。
そして1945年8月15日、日本は敗戦を迎えます。
戦争は終わっても、さらに大きな苦しみが人々を待っていたのでした。
敗れた戦場で 夫は 息子は
今どこにいる 今どこをさまよう
焼け野原で 妻は 娘や息子は
今どこにいる 今どこをさまよう
各地で、連合軍による戦争そのものへの裁き、すなわち戦犯裁判が始まります。
追求は勲にも及び、BC級戦犯として裁かれることになります。
身に覚えのない捕虜虐待と、終戦協定違反の罪に問われる勲。
無実を訴えるリナの声もむなしく、十分な調査や満足な弁護も得られぬまま、勲には絞首刑の判決が下されるのでした。
戦犯として処刑された者、A級の軍人・政治家7名。
BC級は934名。
その中の一人として、勲は絞首台へと向かうことになったのです。
戦犯裁判自体が理不尽なものではないかと嘆く勲に、同じく処刑を待つ島村は自らの覚悟を語ります。
敵の報復感情を和らげるために死に赴くことが日本国民のためになるのだ、と。
リナは一人静かに、勲との思い出の歌「ブンガワン・ソロ」を歌います。
ブンガワン・ソロ
果てしなき 清き流れに 今日も祈らん
花は咲き 花は散れど
愛の誓いは 永久に変わらじ
勲の処刑の刻限が迫ります…。